財産分与請求調停|流れ・ポイント・注意点など解説

寺林智栄
NTS総合弁護士法人札幌事務所。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
■URL https://www.attorneyterabayashi.com/
財産分与請求調停|流れ・ポイント・注意点など解説

離婚時に財産分与をしなかった場合、後から(離婚後に)財産分与ができないのかというと、そんなことはありません。
除斥期間が経過していなければ、離婚後に財産分与の調停(財産分与請求調停)を申し立てることも可能です。

この記事では、離婚時に財産分与の取り決めをせずに後悔している方のために、離婚後の財産分与請求調停について解説していきます。

財産分与請求調停とは?

離婚時に話し合いができず、財産分与の取り決めをしないまま離婚した場合、家庭裁判所に対して速やかに財産分与請求調停を申し立てることが重要です。

除斥期間が経過する前に財産分与請求調停の申立てが受理されれば、財産分与について争うための調停の場を確保することができます。

除斥期間とは、時効と同様に、一定の期間が経過すると権利を主張することができなくなるという制度です。

財産分与は離婚後2年の間にしなければ、その後は除斥期間により財産分与ができなくなってしまいます。
離婚の際に財産分与ができなかった人は、2年が経過する前に調停を申し立てるなどして財産分与の請求を行いましょう。

なお、離婚から2年の除斥期間が経過後も、相手が任意に財産分与に応じてくれた場合には、その財産分与は有効です。
2年経過後に財産分与について相手方と交渉したい場合、ご自分での交渉が難しいならば弁護士に相談しましょう。

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財産分与請求調停の流れ

財産分与請求調停の手続の流れは以下のとおりです。

必要書類の準備

財産分与請求調停の必要書類は以下のとおりです。

  • 申立書
  • 当事者の戸籍謄本
  • 財産目録(その時点で分かっているもの)
  • 財産に関する資料(例:預金通帳の写し、不動産の全部事項証明書、株式取引に関する書類、生命保険の証書等)

上記のうち、財産に関する資料は、必ずしも申立の時点で提出しなくても良いです。
しかし、調停手続の中で必ず提出しなければならないものなので、早めに準備するに越したことはないでしょう。

申立

まずは、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申立を行います。

申立書の書式は裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます。

調停実施

申立してからおおよそ1ヶ月〜2ヶ月後に、第1回の調停期日が決められます。
調停は、1ヶ月〜2ヶ月に一度程度のペースで続けられます。

調停は原則として、裁判所に当事者ないしその代理人が出席した形で実施されます。

しかし、近年は調停を行う家庭裁判所から遠方に住んでいるなどの事情がある場合に、オンラインシステムを利用したウェブ会議や電話会議による出席も可能です。

財産分与の話し合い

調停は、主に男女1名ずつ(合計2名)の調停委員が関与して、当事者間の利害を調整し合意を試みる、いわば「裁判所が関与した話し合い」の手続です。

財産分与調停においては、元夫婦それぞれの財産の開示、不動産がある場合の評価額、財産分与の対象とならない当事者固有の財産(=特有財産)がどの程度あるかなど確認し、分与額や分与方法を調整していくこととなります。

調停成立

調停成立の場合には、「調停調書」というものが作成され、原則としては当事者双方立ち会いの元で担当裁判官が内容を読み上げ、間違いがないかどうかが確認されます。

調停調書には、判決と同じ効力があり、これをもって財産分与の内容が確定することとなります。
当事者は、調停調書の内容に従った財産分与をする必要があります。

調停不成立の場合

調停手続において当事者が財産分与に合意できず、調停が不成立で終了する場合には、手続は自動的に審判に移行します。

審判手続では、裁判官が調停で出てきた資料や当事者の主張に基づいて、分与額や分与方法を検討し、最終的に審判を下します。追加資料の提出や追加の主張を求められる場合もあります。

裁判官が下した審判に不服がある場合には、審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をすることができます。この場合は、高等裁判所で改めて財産分与が審理されることとなります。

即時抗告がされない場合には、審判の告知から2週間が経過した時点で家庭審判が確定し、その内容に従った財産分与をすることとなります。

即時抗告において高等裁判所が下した決定に不服がある場合には、最高裁判所に対して特別抗告許可抗告を申し立てることができます。

ただし、特別抗告ができるのは、即時抗告の決定に憲法違反がある場合に限られ、また、申立期間も即時抗告の決定書が届いてから5日間とかなり短くなっています。
許可抗告ができるのは、法令の解釈に関する重要な事項が含まれているときで、おおむね最高裁判例違反がある場合に限られます。

許可抗告の申立期間も、特別抗告と同じで、即時抗告の決定書が届いてから5日間となっています。

財産分与請求調停にかかる費用と期間

財産分与請求調停の費用

財産分与請求調停の費用は、以下のとおりです。

  • 申立手数料:1,200円(収入印紙で納付します)
  • 連絡用郵便切手:概ね1,000円分程度(券種と正確な金額は裁判所により違いますので、申立時に確認が必要です)

財産分与請求調停を弁護士に依頼する場合には、上記の費用以外に弁護士費用がかかります。

弁護士費用は、着手金と成功報酬で構成され、一律ではありません。金額は弁護士事務所によって異なるので、依頼の際にあらかじめよく確認することが必要です。(着手金は最低でも20万円程度かかると考えておいた方が良いでしょう。)

財産分与請求調停の期間

財産分与請求調停にどの程度の期間がかかるかは

  1. 当事者双方がどの程度の財産を有しているか
  2. 当事者双方がお互いに財産開示に協力的か
  3. 不動産や株式の時価評価額についてスムーズに折り合いがつくか
  4. 不動産の分与方法についてスムーズに折り合いがつくか

といった点により変動します。

財産の開示や不動産の評価等について特に争いがない場合でも、財産開示や不動産の評価額が出るまでの時間を考えると、調停開始から調停が成立するまでは最低でも6ヶ月ほどを要すると思われます。

当事者間の意見が食い違い平行線になる場合には、調停が不成立となり、審判や即時抗告等の手続に進んでいくことになります。そうすると、決着がつくまでに数年かかる場合もあるでしょう。

まとめ

財産分与は離婚後にすることもできますが、場合によってはかなり長期化することもあります。
せっかく離婚できたにもかかわらず、離婚後にまた財産分与で相手方と争いになるのは大きなストレスになるでしょう。

離婚後に財産分与請求をするか、調停をするとしてどの程度徹底的に行うかは、慎重に検討する場合があります。

ご自身で判断がつかない場合や、財産分与の交渉・調停が不安な場合には、離婚問題に強い弁護士に相談することが有効です。
財産分与でお悩みの方は、当ポータルサイトでご紹介している弁護士までどうぞお気軽に相談をしてみてください。

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