離婚の際に家具家電は持ち出しできるか?分け方・財産分与を解説
- 離婚に際して、自分が家を出ることになった。洋服ダンスとパソコンは必需品だから、持ち出してもいいだろうか?財産分与と関係あるか?
そんなことで、離婚当事者が悩むケースも少なくないでしょう。
そこで、今回は、離婚の際に家具家電を持ち出して良いかや、財産分与、分け方について法的に解説していきます。
目次
夫婦の住居で使用していた家具家電は財産分与の対象
夫婦がその住居で使用していた「家具・家電」は、原則として夫婦の「共有財産」です。
したがって、預金などと同じように、本来財産分与の対象となります。
そのため、厳密にいえば、離婚時の財産的価値を査定して、預金などとともに双方の取り分が財産的価値の2分の1ずつとなるように分け合うことが必要ということになります。
しかし、家具家電は、よほど高価なものでない限り、購入して使用を開始すれば財産的価値は著しく落ちるものです。
そのため、実際には、財産分与の対象として厳密に評価して分け合うことはしません。
家に残る方が全て引き継ぐ、あるいは、本人たちの意思にしたがって分け合うなど、個別の状況に応じて対応することとなります。
例外①婚姻前に一方が購入していた場合
婚姻前に一方が購入していた物を婚姻後も使用していた場合には、購入した当事者の特有財産ということになります。
したがって、財産分与の原則にしたがえば、その当事者が取得することになります。
ただし、例えば、元々妻が購入していた冷蔵庫を夫婦が共同で使っていたものの、妻が離婚に伴い家を出ていく際には、年式が古いので不要ということになれば、その家に置いて行って夫が使い続けるといったことも、当事者間で合意ができれば全く問題ありません。
例外②婚姻後に一方だけが使用することを目的に購入した場合
婚姻後に夫婦の一方だけが使用することを目的に購入した物も、その当事者の特有財産と考えることになります。
例えば、妻が自分だけが使用することを目的に購入した美容家電や夫が自分だけが使用することを目的に購入したパソコンなどが該当します。
このような物は離婚に際しても、購入した当事者が取得することを希望する場合が多く相手が異論をとなることは少なく、争いになることが比較的少ないといえます。
夫婦どちらかの親に買ってもらった家具家電の場合
婚姻時に、夫婦いずれかの親からお祝いなどとして買ってもらった家具家電の取扱いはどうなるでしょうか。
親が贈った趣旨は、「夫婦が共同で使うように」ということであることがほとんどなので、原則としては、夫婦の共有財産となり、本来、財産分与に当たり、預貯金などとともに分け方を検討することとなります。
実務上は、送られた物がどのような物であるかにもよりますが、送った親がどちらの親かによって、どちらの物とするのか決めることも比較的多いといえます。
例えば、夫の親が買った・贈ったソファであれば夫が取得することが多いということです。
無断での持ち出しに問題はないか?
では、夫婦の一方が、家具家電を無断で持って家を出ることに問題はないでしょうか。
例えば、妻が離婚を前提として別居するにあたり、タンスやテレビを夫に無断で持って出ていくことに問題はないでしょうか。
結論からいうと、無断での持ち出しは、その後のトラブルを招く可能性が高く、また、財産分与の協議に問題が波及する恐れがあるため、すべきではないといえます。
これは自分が使っていたから自分の物、これは親がくれた物だから私が持って行って当然という自分の判断が絶対ではありません。
先ほども述べたように、たとえ自分が使っていたとしても、婚姻後に購入した物は、原則として夫婦の共有財産になります。
親がくれた物も、原則的な趣旨は「夫婦が共同で使うために」ということなので、やはり原則として夫婦の共有財産となります。
それらを無断で持っていくということは、他方のその財産に対する共有持分権を侵害することになります。
そのため、無断での持ち出し行為に対しては、他方は法的に損害賠償を請求できることとなります。
財産分与にその金額が考慮されることになれば、本来受け取れるはずの財産分与を受けられなくなったり、最悪の場合は、自分の方がお金を払わなければならなくなる事態にもなります。
そのため、無断での持ち出しはすべきではありません。もしどうしてもその家具家電が必要なのであれば、必要性をきちんと相手に訴えて、自分が取得できるように合意することが必要です。
まとめ
離婚にあたって、家具家電の持ち出し問題は一見小さな問題のように思えます。
しかし、実際の離婚の紛争では、家具家電の帰趨をめぐって両者が激しく争い、収拾がつかなくなることも少なくありません。
特に無断で持ちだしをしたようなケースではトラブルになることが多いといえます。
自分にとって大切な物は相手にとっても大切な物かもしれません。
できるだけ速やかに離婚をするためには、強引に自分の権利を主張しようとするのではなく、「協議」「話し合い」で解決しようという意識も必要です。