妻・夫が子どもを連れ去り別居|子供を取り戻す方法はある?
突然子供を自分の元から連れ去られたら、怒りや悲しみでどのように対処すべきかわからなくなるのは当然でしょう。監護権や親…[続きを読む]
このような子どもの連れ去り事例は、昔ほどではありませんが今も発生しています。
「離婚届だけが置かれていて配偶者ごと連絡が取れない」というケースもあれば、「実家にいることは分かっているけれど会ってくれない」というケースもあるでしょう。
離婚は仕方がないと思っていても、親として子どもには会いたいと思うのは当然です。
しかし、何度お願いしても子どもに会わせてもらえないと悩む方は決して少なくありません。
今回は、妻た夫などが子どもを連れ去り別居した場合、子どもを取り戻す・奪還することはできるのか?刑事告訴などの対抗策はあるのか?慰謝料などを支払ってもらうことはできるのか?などを解説していきます。
なお、親権は連れ去ったもの勝ちなどと言われることもありますが、これは100%ではありません。親権についてお悩みの方も、ぜひ本記事をご覧いただければと思います。
目次
妻や夫が勝手に子どもを連れ去ってしまった場合、怒りや悲しみで復讐(子どもを奪い返すこと)を考える方もいます。
しかし、これでは更なるトラブルに発展してしまいますので、冷静に、かつ素早く対処することが大事です。
子どもを取り戻したいと考えるならば、家庭裁判所で手続きをすることで、合法的に奪還ができる場合があります。
子の引き渡し調停は、子の監護に関する処分(子の引渡し)について、家庭裁判所で選ばれた調停委員を介して話し合いを行い、解決策を探る方法です。調停委員を介すため、両者は顔を合わせる必要はありません。
注意点は、調停は法的な効力がなく、あくまでも「話し合いでの解決」を目指していることです。そのため、もし相手が話し合いに応じず合意できなければ、子の引き渡し審判へと手続きを移す必要があります。
しかし、調停委員が間に入ることで両者は冷静になって子どもの利益を考えることができるようになるでしょう。
調停手続では、子どもに精神的な負担をかけることのないように十分配慮しながら、子どもの意向を尊重した取り決めができるように話し合いが進められます。子の引き渡しについても裁判所側から助言されることがあるでしょう。
【参考】子の引渡し調停|裁判所
子の引き渡し審判は、先ほどの当事者の話し合いで解決をする調停とは違い、裁判官に判断してもらう方法です。
審判では、家庭裁判所の調査官が細かく調査して、裁判官が子の監護権や引き渡しについて判断します。家庭裁判所の判断は、子供の福祉が一番に考慮されます。
ここで連れ去られた夫の言い分が認められれば、相手方に子供の引き渡しが命令されます。
なお、離婚成立までの間、子供の「監護者をどちらにするか」裁判所に決めてもらうことを子の監護者指定の審判といい、通常は子の引き渡し審判と同時に申し立てることが原則です。
自分が監護者として認められると、相手方が子供を連れ去った場合は法律違反とみなされます。
子の引き渡し審判前の保全処分とは、仮の引き渡しを申し立てる手続きのことをいいます。
子の引き渡し審判までには、通常、調査などで数ヵ月かかります。そのため、審判を申し立てるのと同時に「保全処分」を申し立てることで、審判が下りるまでの数ヵ月間、子供と生活できる権利が与えられる可能性があります。
例えば、母親が仕事ばかりで面倒を見ていないなど、子供の福祉の観点から母親よりも父親の方がよりふさわしいと判断される場合は、父親への引き渡しが認められるでしょう。
しかし、保全処分により引き渡しが認められても、同居している親が抵抗して子供を渡さないことも考えられます。
そのような場合には、間接強制と直接強制という方法で引き渡しが執行されるので安心してください。間接強制または直接強制、どちらが行われるかは家庭裁判所の決定によります。
間接強制では、命令に応じない親に対して「一日あたり〇〇円払え」と金銭の支払いを命じます。
心理的な負担を与えることで命令に従うよう促す方法です。
直接強制とは、引き渡しを認められた親が執行官と共に子どもの住まいに行き、強制的に子どもを連れて帰ることです。
同居の親より子供へ危害が及ぶことが懸念される場合は、執行官が子供の住まいに強制的に立ち入ることも許されています。
違法な方法で連れ去られてしまったのに子の引き渡し請求や審判前の保全処分など上記のいずれでも子供の引き渡しが行われない場合には、人身保護請求をすることができます。
離婚前または監護権決定前に人身保護請求することは滅多にありませんが、虐待などで子供に危害が及ぶ場合は特別に認められています。
子どもの連れ去りは憤りを感じる出来事ですが、だからと言って感情のままに行動したり、復讐を考えたりしてはいけません。
後からご自身が不利にならないように、以下のことに気をつけて行動しましょう。
配偶者が子どもを連れ去り会わせてくれない場合で、相手の居所がわかっていれば、自力で子供を奪い返そうとする方もいることでしょう。
「妻が連れ去ったのだから、今度は自分が相手方から子供を連れ去っても良いはず」と考えてしまうのも分かりますが、このような行為は法律上認められていません。
法律の手続きを取らず子どもを取り返そうと連れ去ることを自力救済と言いますが、このように別居後に子どもを取り返そうと連れ去ると、未成年略取罪という犯罪になることがあります(刑法224条)。
何より、夫婦間の争いに巻き込まれた子どもがとても傷つくのは想像に難くありません。子どものことをよく考え、冷静に対処することが何より重要になります。
「連れ去ったもの勝ちじゃないか」と感じても、上記で解説するように法的な方法で対処しましょう。
上記の通り、離婚していない親であっても別居中に実子を連れ去った場合は犯罪行為になる可能性があります。
ただし、別居に際して子どもを連れて行かれた場合、子どもを取り戻したいと警察にお願いしても、警察は民事不介入の原則により「家裁に行ってください」と言って動かないことが多いです。
つまり、子どもの連れ去りで被害届を出すことや、刑事告訴することは難しいと言えるでしょう。
そこで、連れ去りの違法性について家裁で争うことになるケースもありますが、これまでも別居連れ去りについての裁判は多くなされています。しかし、状況によって違法か適法かは変わってしまうケースが多く、厳密に「このようなケースは」違法とは判断しづらい状況です。
例えば、自宅以外の幼稚園などに迎えに行き連れ去った場合に違法とされたケースもあります。
仮に違法とされれば、子どもを唐突に引き離されたことにより負った精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。
子どもの連れ去りにおいてよく耳にするのが、「連れ去った方が勝ち」という言葉です。
実際、別居前に子供を連れ去った方が、監護権や親権を認められることが多いです。
これは、父親も母親も著しく何かしらの問題があるというケースが少なく、どちらが親権を持っても問題がないと思われるときには、子供の生活環境がなるべく変わらないようにするという「現状維持の原則」が適用されるからです。生活環境が頻繁に変化することは子どもにとって負担になりますので、連れ去られた環境のままである方が適していると判断されるのです。
しかし、判例では連れ去られた方が親権を勝ち取ったケースもあります。希望を捨てずに専門家とともに対処をしましょう。
親権が認められるために裁判所で最も重きを置かれる点は、子にとって父母のどちらがより適しているかということです。
特に、以下のような要素が判断材料になります。
生まれたばかりの乳児であれば、授乳などが必要なため母親の方が親権者にふさわしいとされ、母親優先の原則が適用される場合が多いでしょう。
しかし、最終的には上記の要素全てを考慮され判断されます。母親優先の原則があっても、母親の子供への愛情が薄かったり、子育てをするための十分な環境が整っていないと判断されたりすれば、父親の方がより親権者にふさわしいと判断されるでしょう。
連れ去られた子どもの親権を獲得したい方は、諦めずに弁護士へ相談し法律的な準備を進めましょう。
グローバル化が進み、日本でも国際結婚が増えています。そんな中、国際間での子供の連れ去りが大きな問題となっています。
例えば、日本人妻が子供を連れ日本に帰ってきて外国人の夫が子供と交流できなくなるケースや、外国人の妻が子どもを連れて帰国してしまい日本人の夫が子どもに会えなくなるケースです。
そこで日本政府は、平成25年にハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)を締結しました。
最近では、国際間だけにとどまらず「日本国内でも子供の連れ去りは違法」であるという認識が広まりつつあります。
連れ去りをしたほうが優先という考えが見直されてきてはいるのです。
突然子供を自分の元から連れ去られたら、怒りや悲しみでどのように対処すべきかわからなくなるのは当然でしょう。
もしかしたら調停や審判がうまくいかず、「連れ去られたからもう無理だ」と諦めそうになるかもしれません。
子どもを取り戻すためにできることは、できるだけ早く弁護士などのプロへ依頼することが大切です。
別居後の生活が長くなり子どもの生活環境が落ち着いてくると、監護の継続性があるとして、離婚時に相手方に親権を取られることがよくあります。
監護権や親権も含め、今後の子供との生活を望む場合は、早めの行動が何よりも重要です。
子どもへの愛情が充分で、かつ自分の親や家族の助けを期待できる場合、連れ去られた側であっても監護権や親権を認めてもらえる可能性は十分にあります。
どうすれば良いか分からないという場合は、一刻も早く子供の連れ去りや離婚に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。