自己破産における「財産隠し」はどうしてバレる?
今回は、免責不許可事由の中でも特に事案が多い「財産隠し(資産隠し)」をした場合、バレたら具体的にどうなるのか、どうし…[続きを読む]
自己破産は、裁判所に認められれば借金が0になる(税金・保険料など一部の債務は除く)という債務整理方法です。
一方で、減額効果が絶大な手続きというだけあり、自己破産をすることによって生活面にさまざまな影響が生じることも確かです。
インターネットを検索すると、「自己破産をすると数年間はクレジットカードが使用できなくなるし、ローンも組めない」「数ヶ月間は職業に制限がかかる」「手持ちの高価な財産を処分される」といった情報が見つかるかもしれません。
さらに、「自己破産をすると銀行口座が凍結される」という話も見ることがあります。
ここでは、自己破産と銀行口座の凍結について、詳しく解説していきます。
目次
早速ですが、自己破産をすると口座凍結されるという話は本当です。
例えば、A銀行に口座があり、その状態でA銀行から借りたローンを返済せずに自己破産をする場合、A銀行の口座は凍結されてしまいます。
債務者(お金を借りた側)が自己破産すると、債権者(お金を貸した側・銀行など)は借金(債権)を当初の予定通りに回収することができなくなります。
そこで、銀行からお金を借りている場合、債権者である銀行は自身の銀行内に開設された債務者の口座を凍結し、その残高から債権の回収を図ります。
債務者は、自己破産手続き費用の工面や今後の生活費等のために、いずれ口座からお金を引き出すでしょう。
お金を引き出されると債権の回収ができなくなるので、それを防ぐために口座を凍結し、残高を回収をしているのです。
お金を借りている銀行の「別支店」に口座がある場合は、その口座も凍結の対象となります。
また、ローンだけでなく、銀行のカードローンなど、とにかくお金を借りている状態であれば口座は凍結されてしまいます。
一方、A銀行に口座がある状態で、B銀行から借りたローンを返済せずに自己破産しても、A銀行の口座は凍結されません。
つまり、「自己破産をしたときに債権者となっている銀行に開設している口座」だけが凍結されてしまうのです。お金を借りていない銀行の口座は凍結を免れます。
自己破産による口座凍結の影響は、主に以下の3つです。
口座凍結の悪影響として、債務者が最も困るのがこれでしょう。
口座にあるお金を引き出せなくなるため、下手をするとその日から生活に困窮してしまうおそれがあります。
銀行によりますが、凍結した口座には入金もできなくなることがあります。
これの何が問題なのかというと、給与の振込に使っている口座が凍結された場合、給料を受け取れなくなってしまいます。
手渡しで受け取れるなら問題ないと思う方もいるかもしれませんが、振り込みができないとなると勤務先に口座凍結の事実を知られてしまいます。
自己破産が理由で解雇されることはありませんが、場合によっては職場内での居心地が悪くなる可能性も0ではありません。
さらに、年金なども入金されなくなってしまいます。
凍結された口座からはお金の引き落としができなくなります。
そのため、家賃や水道光熱費などの引き落としがされず、知らないうちに滞納してしまうおそれがあります。
滞納が続くと電気や水道などを止められることがあるので、前もって対処しておく必要があります。
弁護士に自己破産を依頼すると、依頼を受けた専門家は各債権者に「受任通知」という書類を送付します。これは、「自己破産を受任しましたので、今後は債務者本人ではなく窓口となる当職にご連絡ください」という債権者向けの通知です。
これを受け取った債権者は、以降、直接債務者とやりとりができず、やり取りの際は弁護士を通さなければならなくなります。
また、受任通知を受け取った時点で、債権者は債務者が自己破産などの債務整理をする準備に入ったということを知ります。
先述の通り、債務整理をされたら債権の回収が難しくなるため、銀行側は債務整理の事実を知った時点で債権を回収しようと債務者の口座を凍結します。
つまり口座凍結のタイミングは、多くの場合「銀行側が受任通知を受け取ったとき」です。
口座を凍結した後、銀行は口座残高と債権を相殺して回収するか、保証会社等から代位弁済を受けて債権を回収します。
この手続きには1~3ヶ月程度の期間が必要です。
よって、1~3ヶ月が経過して債権の回収手続きが済むと、口座凍結は解除されます。
銀行口座が凍結してしまうと生活に大きな影響が発生します。
しかし、事前に対策しておけば悪影響を軽減できます。
単純な方法ですが、前もって口座からお金を引き出しておけば、仮に凍結されても安心です。
ただし、自己破産の前に多額の現金を引き出すと、自己破産で禁止されている「財産隠し」を疑われる可能性があります。
予め弁護士に「どれくらいの金額を」「何の名目で引き出すのか(自己破産費用・生活費など)」を相談してから実行に移しましょう。
なお、引き出したお金を再度口座に預金したい場合は、必ず別の銀行の口座に入れてください。
先述の通り、自己破産の対象となる借金をした銀行の口座にお金を入れると、それが別支店の口座であっても凍結されてしまいます。
診断後は何度でも相談無料
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凍結が予想される口座ではなく、別の口座に給与を振り込んでもらえるように事前に職場と話をつけることも大切です。
この手続きは弁護士が受任通知を送る前に完了しなければ意味がないので、勤務先や弁護士とタイミングを調整する必要があるかもしれません。
なお、ご自身で事業を経営している人(個人事業主など)も、同じように入金先の口座を変更することをおすすめします。
家賃や水道光熱費、税金や年金の支払いなどを口座引き落としにしている人は多いはずです。
しかし、凍結された口座からは引き落としができないため、前もって引き落とし先の口座を変えるか、払込用紙でのコンビニ払いに変更するなどの対策を行ってください。
最後に、口座破産に関する疑問や不安を解消できるよう、よく聞かれるFAQに答えていきます。
基本的には従来通り使えます。
しかし、一部の銀行では口座を解約してしまうこともあるようです。
なお、口座残高と借金が相殺された場合、当然ですが口座残高は以前より少なくなっています。場合によっては残高が0円になっているというケースもあるでしょう。
自己破産をしても、口座を作ることに何ら問題はありません。
口座を理由に銀行から口座開設を断られることもないでしょう。
債務整理には自己破産だけでなく、任意整理や個人再生などの方法があります。
この場合も、債権者に銀行がいれば、その銀行で作った口座は凍結されてしまいます。
ただし任意整理の場合、借金を整理する債権者を任意で選ぶことができますので、銀行を整理の対象から除外すれば口座凍結も回避することが可能です。
(※個人再生は自己破産同様に全ての債権者を対象とするため、除外・回避はできません。)
銀行からの借金がある場合、自己破産するとその銀行にある口座は凍結されてしまいます。
事前にお金を引き出すなどしておけば被害を食い止められますが、自己破産の前に大金を引き出すと財産隠しを疑われ、自己破産の手続きに悪影響があるかもしれません。
事前に弁護士と相談して対策を練っておけば、多くのトラブルは回避できます。
口座凍結に限らず、自己破産の悩みは必ず弁護士にご相談ください。